「社長の独断専行」から内部監査を考える

携帯電話向けのコンテンツの開発を手掛ける「fonfun」という会社によると、証券等監視委員会が同社に対し、課徴金納付命令の勧告を行った旨をプレスリリースで公表しました。

【プレスリリース】
http://www.fonfun.co.jp/cgi/ir/files/20110825_01.pdf 

課徴金の納付額は1,963万円と報じられています。
同社の2012年度 第一四半期の経常利益(1,958万円)とほぼ同額です。

理由を見てみると、「有価証券報告書等の虚偽記載」が挙げられていますが、いったい同社では何が起こったのでしょうか?
これより一緒にひも解いてみたいと思います。

※当メールの内容はインターネット等に公開されている情報に基づき、担当者の私見をまとめたものです。会社全体の意見ではございません。 

1.概要について

同社の大株主であるA氏との関係が悪化した元社長が、A氏を株主から追い出そうと、不正会計処理を駆使して株式を大量取得するための資金を社外に流出させました。

尚、資金の流出総額は6億3,000万円と報じられています。
本件には元社長の他、2名の取締役も加担したと言われています。

同社では、6億3,000万円の流出と不正会計処理の発覚に伴い、過年度有価証券報告書を以下の通り修正しています。
※訂正前/訂正後(影響額)の順です

【2009年3月期】
○連結売上高      2,395百万円 / 2,395百万円
○連結経常損益     -372百万円 / -367百万円(4百万円)
○連結四半期純損益  -1,680百万円 /-2,129百万円(-449百万円)
○連結純資産額      613百万円 /  132百万円(-481百万円)

【2010年3月期】
○連結売上高      1,107百万円 / 1,107百万円
○連結経常損益       42百万円 /    94百万円(52百万円)
○連結四半期純損益     13百万円 /   45百万円(32百万円)
○連結純資産額      766百万円 /  316百万円(-450百万円)

本件の発覚後、元社長と2名の取締役は辞任し、3名が保有する同社株式の売却代金を同社に支払うことについて同意したようです。

ただし、同社は元社長含めた3名に対する損害賠償請求については、別途訴訟を提起する予定とのことなので、まだまだ終わりは見えていないようです。  

2.組織体制上の主な問題は?

いろいろと挙げられますが、ここでは3点について触れたいと思います。

【問題点1】元社長の独断専行
同社の資本政策や資金調達に関する事項は、元社長が単独で意思決定を行っていました。
尚、他2名の取締役は、元社長の決定事項に追随するしかなかったようです。

【問題点2】取締役会の形骸化
通常、高額の経費支出は取締役会の承認事項ですが、同社の社内規定によると、億単位の経費支出であっても、社長単独の判断で実行することが可能だったようです。
その他議決事項も、実質的には社長の単独決定であり、形式的な審議に留まっていました。

【問題点3】社外取締役の監督機能
社外取締役は、同社のコンサルティングをしている会社の担当者が選任されていました。
これでは、「独立性」という観点から実効的な監督を期待するのは難しいでしょう。  

3.内部監査機能は?

同社の内部監査機能では、内部監査室(1名)が担っていました。

実態は、日常業務のモニタリングを実施できていなかったと思われ、十分に監督機能が果たされていたかについては疑問符です。
※改善案の中には、強化の必要性が盛り込まれています

一方で、本件は経営トップ3名が組織ぐるみで不正関与しているという特性から、仮に内部監査が機能的であっととしても、「抑止力」になることが果たしてできたのでしょうか? 

──────────────────────────────

今回の事例は、コーポレートガバナンスの欠如が起因し、元社長の暴走を止めることができず、6億円の社外流出を許してしまう結果になったと考えられます。
このような兆候を掴んだ場合、皆様の場合はどのような行動を取られるのでしょうか?

CIAコースは、内部監査の専門的実施の国際基準に基づき、「監査の視点」を養成していただくカリキュラムになっており、内部監査のデファクトスタンダードを学習します。また、不正の兆候(Red Flag)や職掌分離についても学習します。

「監査の視点」は経営者に求められる素養の1つです。
内部監査に従事されている方はもちろん、将来的には企業経営に関与していきたいとお考えの方にも、とても有益です。

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