海外子会社で発覚した不正会計

去る8月のことになりますが、沖電気工業の海外連結子会社(OKI Systems Iberica)において、不正会計が発覚しました。

9月11日にリリースされた外部調査委員会の調査報告書によると、今回の不正会計が連結業績に与えるインパクトは以下の通りです。

●売上高    ▲75億円
●営業利益  ▲216億円
●当期純利益 ▲308億円
●純資産   ▲244億円

※対象期間:2008年度期首~2013年度第一四半期

いったい、海外連結子会社で何が起こったのでしょうか?

概要について

今回の不正会計ですが、スペインの販売子会社が舞台になります。
そして主人公は、「子会社元社長(以下:元社長)」です。

元社長ですが、スペイン子会社を立ち上げ、独自の取引先を開拓し、プリンタ事業を急進させたことから、グループ内ではカリスマ的存在でした。

そんなカリスマ的存在でも、リーマンショックの波には逆らえません。
売上規模が収縮する状況下においても、売上を維持するため、「流通卸売業者(以下:業者)」に対し、過度な押込み販売を行います。

同社と日頃取引のある業者の中には、押込み販売の影響で資金繰りが厳しくなるところもあったようです。そこで元社長は、それらを支援することが、自社およびグループ全体の売上確保につながると考えた結果、

1、プリンタおよび消耗品事業における「架空売上の計上」
2、テレビ販売活動における「債務の未計上」および「売掛金過小計上」
3、同一売掛金を利用した「重複ファイナンス」

といった不正会計に手を染めることになります。

今回の不正会計の背景には、「カリスマ的存在」としての評価や地位、そして業績連動ボーナスを維持するため、無理をしてでも予算達成を図ろうとしたことが考えられます。
(真の理由は明らかになりませんでした)

尚、不正会計発覚における影響額については、先述の通りです。

不正会計の手口とは? ~プリンタおよび消耗品事業を例に~

ここでは、「プリンタおよび消耗品事業」を見ていきたいと思います。
実際の手口を簡略化すると以下のようなフローになります。

1、業者への過剰な押込み販売を行う
      ↓
      ↓業者の資金繰りが厳しくなる
      ↓
2、債権回収を先延ばしにする
      ↓
      ↓今度は自社の資金繰りに負担がかかる
      ↓
3、売掛金および受取手形の現金化
      ↓
      ↓手形決済の資金を提供
      ↓
4、業者が支払手形を決済する

ここで2について補足すると、「売上を一旦取り消して再計上する」という手法が取られていました。具体的な例を挙げると、

●100ユーロで売上計上
●支払期日前に30ユーロ+70ユーロの売上を取り消し
●40ユーロ+60ユーロの売上として再計上

という要領です。
合計は100ユーロに変わりありませんが、分割することによって実態の伴わない請求書が大量に発行されたことになります。

このように債権回収を先延ばしにすることで、社内の遅滞債権のモニタリングを回避していたようです。

ところで、内部監査の状況は?

不正会計の要因は様々ですが、「内部監査」という観点で見ていきたいと思います。

まずは各社の関係を整理すると、以下の通りになります。

親  沖電気工業
     |
子  沖データ
     |
孫  OKI Europe
     |
ひ孫 OKI Systems Iberica ※今回の不正の舞台です

OKI Systems Ibericaの管理・監督責任は、ご覧のとおりOKI Europeにあります。

ただし、OKI Europeには内部監査機能がないため、代わりに沖データ 監査室が実施することになっていました。

その実態をまとめると、

●2008年7月、OKI Systems Ibericaに初めて監査を実施
●ただし往査の期間は2日間だけ、ヒアリングが中心
●これ以降、一度も監査が行われていない

とのことです。
お世辞にも、十分な監査手続が行われていたとは言い難いです。

尚、「再発防止策の提言」においては、

●経営モニタリング機能を向上させるには、人数が著しく少ない
●適正なリスク・ベース・アプローチに基づく監査が導入されていない

という手厳しいコメントも記載されています。

今回の顛末を経て、どのように改善していくのでしょうか?
今後の動向を注視していきたいと思います。

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