今年は多い?!海外子会社での不正会計

今年は、海外子会社での不正会計がやけに目立つ気がします。

去る9月28日、自動車部品の製造を手掛ける『ニチリン』の海外連結子会社(ニチリン テネシー インク)において、不正会計の発覚に関する記事がリリースされました。

2012年11月16日にリリースされた外部調査委員会の調査報告書によると、今回の不正会計が連結業績に与えるインパクトは以下の通りです。

●営業利益  ▲130,352千円
●当期純利益 ▲100,864千円
●純資産   ▲100,184千円
※対象期間:平成23年12月期 第1四半期~平成24年12月期 第2四半期

いったい、海外連結子会社で何が起こったのでしょうか?

概要について

今回の不正会計ですが、アメリカ テネシー州にある子会社で起こりました。
そして子会社の元社長(以下:元社長)が不正操作の主導的立場にあったようです。

事の発端は、2011年12月における赤字計上を避けたいというものでした。

避ける方策を経理部長に指示した結果、製造部長や購買・生産管理課長らも巻き込み、2012年6月まで継続して在庫の水増し操作が行われました。

この背景には、元社長の地位や社内的な評価が脅かされると危惧した個人的な心情があったものと認められています。

しかし悪事はやはり長続きしません。

子会社は月次業務報告を義務付けられており、2012年5月頃から、売上の増減と利益の増減が連動しない傾向を示し始めたようです。

現地での実地棚卸集計表と経理在庫品集計表との抜き取り照合の結果、子会社が2012年6月末日現在の在庫金額を過大計上している疑念が高まりました。

この時点で、子会社社長が不適切な会計処理を行っていたことを白状し、明るみに出ることになりました。

海外子会社の管理体制は?

本国(日本)から遠く離れたところにある海外子会社ですが、適切に管理されていたのでしょうか?

1、子会社社長の派遣および監視
 ・本社の部長/次長 ⇒ 子会社の社長
 ・本社の取締役   ⇒ 子会社の非常勤取締役/監査役

とすることで、子会社社長の監視を行っているようです。

しかし、今回のケースでは、本社の取締役が子会社社長として派遣されていたことから、監視体制が十分ではなかったようです。

2、経営管理部
海外子会社は、損益計算書と貸借対照表の提出を義務づけられていました。

その報告結果を基に、経営企画部では予算実績分析、前年比較などをチェックしていました。

概要でも触れましたが、2012年5月頃から売上・利益の動きに関して疑問が生じており、在庫の増加に関して元社長に質問しているが、タイの洪水による受注減があったことから、不信感を抱くには至らなかったようです。

3、経理部
在庫の増加が借入金の増加に影響していることを把握しており、2012年初頭より、本社社長より在庫を減らすよう指示が出ていたようです。

しかしながら、ここでもタイの洪水が関係してまいります。
洪水の影響で受注が大幅減したため、実際の在庫の増加と水増しの在庫の見分けがつかなくなっていたようです。

内部監査の状況は?

本社(日本)の内部監査室は3名体制のようです。

今回の子会社のように、内部統制を評価する上で重要な拠点として位置づけられるところの場合、

1、業務担当部門が自己評価する
     ↓
2、その結果を内部監査室が評価する

という方針を採っているようです。

調査報告書に挙げられていた、まずかった点をまとめると、以下の通りになります。

【全社統制について】
 ○元社長の業務筆耕や会社の状況に関する監視/監督が行われていたとは言えない
 ○元社長は、他の非常勤取締役より格上のため、監視体制として十分ではない

【決算財務報告プロセスについて】
 ○経理部長が原価計算等に精通していない
 ○その結果、簡便的な材料比率を用いて計算を行っていたことを検出できていない

もちろん、内部監査には限界がありますので、内部監査だけで今回の不正会計を全て防ぐことになるとは言えません。ただし、内部監査実施の際、監査対象の子会社とさらなるコミュニケーションを図ることを提言されています。

バックナンバー

Vol.55
試験制度改定前のラストチャンス!
Vol.54
常態化した不適切な会計処理
Vol.53
粉飾すれば、給料・賞与が増える?
Vol.52
絶対的権力者の暴走から「内部統制の限界」を考える
Vol.42
金融庁の「不正リスク対応基準」を読む
Vol.41
桜の便り&連結子会社における不正会計
Vol.40
数値目標のため。食品スーパーの不正会計
Vol.39
CIAで学ぶ「リースバック」とは
Vol.38
宮城県 山元町社協で起きた着服
Vol.37
2013年、MBOの実施動向は?
Vol.36
北海道シリーズ『着服事件』
Vol.35
北海道内の大学で発生した『不適切な経理処理』
Vol.34
『虚栄心』が招いた不正会計
Vol.33
レンタル企業ならぬ「CCC」とは?
Vol.32
ギャンブル流用も?!子会社トップによる不正会計
Vol.31
今年は多い?!海外子会社での不正会計
Vol.30
「定率法」→「定額法」への変更の背景とは?
Vol.29
目立つ企業の横領と“4.5億円”
Vol.28
退職金・企業年金の会計ルール
Vol.27
海外子会社で発覚した不正会計
Vol.26
執行役員が不正行為~1億7,000万円の着服
Vol.25
もしも大切なデータが消えてしまったら?
Vol.24
内部監査人は増えているのか?減っているのか?
Vol.23
危険な会社は41社!ゴーイングコンサーンについて
Vol.22
内部監査研修の充実化に向けて
Vol.21
監査基準が変わる!~不正会計防止に向けて~
Vol.20
キャッシュフロー計算書から、企業の栄枯盛衰を辿る
Vol.19
2011年度に不正会計を開示した上場企業数は?
Vol.18
コンプライアンス違反で倒産!?
Vol.17
『続』ここ最近の「横領事件」を探る
Vol.16
意外にも多い!? ここ最近の「横領事件」を探る
Vol.15
「定率法」から「定額法」へ、帝人の例
Vol.14
不正が発覚した企業のその後を追う
Vol.13
内部監査を通じて「棚卸資産を過大計上」を発見
Vol.12
2012年、内部統制の枠組みが変わる!?
Vol.11
2011年のMBO実施企業数、ついに20社の大台に!
Vol.10
杜の都で、常勤監査役が大暴走!?
Vol.09
内部監査が企業ブランドの向上につながる!?
Vol.08
「継続企業の前提」について
Vol.07
止まらぬJA香川県の現金着服
Vol.06
社債発行による資金調達
Vol.05
コーポレートガバナンスが問題なのか?
Vol.04
「元役員による会社資金の横領」から内部監査を考える
Vol.03
会計の概念で見る「すき家」の事例
Vol.02
2011年、MBO活況の裏側で「上場廃止」について
Vol.01
「社長の独断専行」から内部監査を考える
CIA無料説明会を予約する  CIA資料を取寄せる(無料)