『虚栄心』が招いた不正会計

2012年12月7日、各種イベントやセールスプロモーションなどの企画制作・運営を行う企業において、不正会計に関する調査報告書がリリースされました。

その動機を見ていると、実績を上げることにより、「注目されたい・大手クライアント担当チームを見返したい」という『虚栄心』が起点になっているようです。

いったい、何が起こったのでしょうか?

概要について

今回は、営業本部内で中堅代理店を主な顧客とするチームのリーダーが主人公です。

このリーダーですが、2009年に同社にとって新規業務領域となる小規模な商業施設の販促業務を受注したようです。

受注額は小さいものの、業務を進めていくためには固定費が大きくのしかかるため、スタート時点から採算が危ぶまれていました。

「注目されたい・大手クライアント担当チームを見返したい」

という思いから挽回を試みますが、その思いとは裏腹に赤字が継続します。
そこで、あたかも利益が出ているように装うため、納品日の改ざん、売上の早期計上、架空計上に手を染めてしまいます。

悪事が明るみになるきっかけとなったのは2012年夏のことです。

取引先から入金の確認が全く取れないため、リーダーは入金遅延の理由および入金日の確認を迫られます。

そして10月、業を煮やした経理担当者は取引先の経理部門に直接問い合わせたところ、請求書を受領していないことが判明し、リーダーは一連の不正会計を白状することになります。
(白状する前に行方不明になったようです)

不正会計の発覚後、過年度決算の訂正を余儀なくされる訳ですが、影響額(減額)を以下まとめると、

●売上高     173百万円
●営業利益    235百万円
●経常利益    235百万円
●当期純利益   147百万円

という結果になりました。
そしてリーダーは12月7日付で懲戒解雇となりました。

不正会計の手口とは?

ここでは、3通りの手口をご紹介いたします。

○1:案件登録について

【通常】
  1業務ごとに登録する。

【今回】
   多品種小型オーダーかつ通年で定期的・連続的に大量の業務を提供するものであったため、半年ごとにまとめて登録していた。

○2:売上の早期計上・架空計上について

【通常】
  先方より受領した注文書に基づき売上計上する。

【今回】
  リーダーが注文書を自ら改ざんし、それに基づき売上計上していた。

  また、不正発覚につながった回収が遅れている売掛金については、「支払確約書」を偽造し、回収見込みがあるように装っていた。

○3:原価の先送り・未計上について

【通常】
  外注先からの請求書に基づき原価入力する。

【今回】
  外注先に対して、「数か月先の案件」として請求書を発行させ、その内容に基づき原価入力していた。つまり「未成業務支出金」として処理されていた。

2と3の手口が可能になった背景には、「○1:案件登録」が絡んでいます。
案件を個別に管理できれば、異常性を発見できたと思われますが、「半年ごとにまとめて登録」することにより、発覚を免れていました。

肝心の再発予防策は?

今回の不正会計は、先述の通り「半年ごとにまとめて登録」によるものと言えます。

そこで「売上・仕入計上プロセス」に注目して、どのような予防策を講じることになったのかご紹介したいと思います。

●売上計上プロセス
  今回のように『新規業務分野』の場合は、営業担当に任せず、管理本部が直接、売掛金の残高および売掛金・売上計上の実在性を確認するように変更。

●仕入計上プロセス
  請求書に加え、チラシ等の成果物を添付させることで、取引の実在性を確認できるように変更。

  また管理本部が直接、買掛金の残高および買掛金・仕入計上の網羅性を確認するように変更。

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