北海道内の大学で発生した『不適切な経理処理』

北海道出身の私にとって、冬に雪が積もるという風景は日常的なことでしたが、「雪の無い冬」の生活を長らくしていると、妙に懐かしさを感じました。

望郷の念ではありませんが、ふと北海道内で何かネタになるような出来事が発生していないかと思い調べてみました。

すると2012年末に北海道内の大学において相次いで『不適切な経理処理』に関するプレスリリースが出ていました。

いったい、何が起こったのでしょうか?

概要について

国などから交付された研究費を取引業者に不正管理させる『預け金』が、相次いで発覚したそうです。

これに伴い不正経理も明らかになり、その影響額は、

●北海道大学(以下:北大)   223,747千円(2007年4月以降)
●北海道教育大学(以下:道教大) 3,472千円(2006年4月~2011年8月)

と報告されています。
※北大の影響額が突出していますね

道教大については、影響額は北大ほどでは無いにせよ、203千円の「私的流用(親族の旅行費用)」が発覚しています。

北大においては、現時点で私的流用が確認できていないものの、調査範囲を更に拡大することから、影響額の拡大はさることながら、私的流用が新たに発覚する可能性も浮上しています。

不正会計の手口とは?

ここでは、3通りの手口をご紹介いたします。

○1:案件登録について

【通常】
  1業務ごとに登録する。

【今回】
  多品種小型オーダーかつ通年で定期的・連続的に大量の業務を提供するものであったため、半年ごとにまとめて登録していた。

○2:売上の早期計上・架空計上について

【通常】
  先方より受領した注文書に基づき売上計上する。

【今回】
  リーダーが注文書を自ら改ざんし、それに基づき売上計上していた。

  また、不正発覚につながった回収が遅れている売掛金については、「支払確約書」を偽造し、回収見込みがあるように装っていた。

○3:原価の先送り・未計上について

【通常】
  外注先からの請求書に基づき原価入力する。

【今回】
  外注先に対して、「数か月先の案件」として請求書を発行させ、その内容に基づき原価入力していた。つまり「未成業務支出金」として処理されていた。

2と3の手口が可能になった背景には、「○1:案件登録」が絡んでいます。
案件を個別に管理できれば、異常性を発見できたと思われますが、「半年ごとにまとめて登録」することにより、発覚を免れていました。

『預け金』とは?

簡単にまとめると、以下の通りです。

●取引業者と架空取引を行う
●物品が納入されていないのに納入されたなどとして代金を支払う
●その支払金を当該業者に管理させる

年度末までに使い切れなかった研究費は、交付元に返還しなくてはなりません。
一方で、研究結果を出すためには相当な年月を要するため、単年での完結を前提とした現在の仕組みに疑問を感じます。

★長期間にわたり、じっくり研究することで成果を出したい
★しかし研究費は単年で使い切らなくてはならない

この「理想」と「現実」のギャップから、今回の不正会計発生の要因を垣間見ることができた気がします。

ところで、調査体制は?(北大を例に)

今一度、北大のプレスリリースを見ると、

●研究費の不正使用防止に関する規程の整備
●研究費の不正使用に関する学外の通報窓口の設置
●研究費の不正使用防止のための意識向上

と2007年に相次いで対策を強化しています。
それにも関わらず、不正会計が相次いで発生したということは、「形骸化」していたということでしょうか。

実際には、納入物品を「納品受付センター」でチェック・監視する仕組みにしたが、後で物品を取引業者に持ち帰らせて代金をそのまま預け金にするといったことが横行していたようです。

最後の方に、再発防止策を掲げていますが、「ハンドブックの作成」「誓約書の提出」「講習会の受講」など実効性について甚だ疑問に感じます。

もし皆さんが、再発防止の責任者に任命されましたら、どのような対策を講じるでしょうか?

クラスの中で、その答えの糸口を一緒に探してみませんか?

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