数値目標のため。食品スーパーの不正会計

2012年末のことですが、長野県内に展開する食品スーパーにおいて、不適切な会計処理が発覚しました。その調査報告書が2月8日にリリースされていましたので、ご紹介させていただきます。

今回の不祥事を簡単にまとめると、

●仕入れ担当者によるリベートの架空計上が常態化
●事態を知った経営トップら(社長・副社長・専務)が私財を投じて、隠ぺいを図る

となります。
ある意味「組織ぐるみ」とも言えますので、極めて悪質です。

この食品スーパーで一体何が起こったのでしょうか?

◆概要について

同社が事業展開する長野県内において、近年大手スーパーが参入したため、厳しい価格競争にさらされることになりました。売上・利益が伸び悩む中、様々な策を講じますが、必ずしも功を奏していなかったようです。

いつしか社内においては、短期的に結果が出やすい「粗利率」「粗利額」の改善を重視する傾向が強くなりました。

そんな中、「リベート(仕入割戻)」が悪用されることになります。

リベートとは、一定期間内で大量仕入れした場合に支払われる奨励金のことです。
会計上は仕入高から控除されることから、仮に販売額が同じだったとしても、

●売上原価が減る
●粗利率・粗利額が増える

という計算になります。

仕入担当者は、架空の金額を記したリベート明細書を作成することで、粗利の向上を企みます。その結果、累計1億8000万円もの架空計上が明らかになりました。

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架空のリベートなので、当然ながら入金されるはずがありません。
「多額の未収入金」として、社内で問題が発覚したのは2012年8月のことです。

不適切な会計処理が発覚すると、社内調査して決算訂正を検討するのが筋ですが、なんと社長らが約6000万円の私財を投じ、未収金の穴埋めをすることで隠ぺいを図るという悪行に出ました。

ただし、悪事を隠し通すのは難しいようです。
同社を担当する監査法人に「内部告発」があったため、明るみになりました。

辞任した役員もいる中で、隠ぺいを主導した社長は、代表権を返上したものの会長に就任しています。

引き続き社内に留まるのであれば、「何も変わらないのでは?」というのが率直な感想です。

◆発生の原因について

『数値目標(粗利率・粗利額)に対する姿勢』

これが、不適切な会計処理を誘導した主要因として考えられます。

先ほど、短期的に結果が出やすい「粗利率」「粗利額」と申し上げましたが、その目標設定には無理があったようです。

そのような状況にも関わらず、商品部長からは、目標の見直しはされず、ただ数値達成だけを厳命されていました。(動機・プレッシャーですね)

再発防止策の中には、

●目標設定後の環境変化を意識して随時見直し
●現場から得た情報を積極的に検討するといった姿勢
●現場の意見や意識に随時留意する

と言及されています。

◆内部監査の状況について

今回の調査報告書では、内部監査についても触れられています。
その内容を以下抜粋すると、

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内部監査部は、事務管理部が架空計上を容認するような処理をしていたリベート明細書について、それ以上の問題の有無を独自に確認する作業を行っていない。

また、サンプル調査についても、リスクが高い部門に対する検証等が不十分であった。

このように、内部監査部は、監査役や会計監査人と連携する前提としての問題発見に向けて業務執行がおざなりであり、その役割を果たしていない。

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結構辛らつな内容ですね。
そして、再発防止策の中には、

●内部監査マニュアルの策定等により、内部監査担当者の教育の強化を図ること
●監査結果を定期的に取締役会に報告し、取締役会が必要に応じて検討し改善の契機にする

の2点が挙げています。

今回の不祥事を機に、実効性のある内部監査を実現できることを願ってやみません。

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