桜の便り&連結子会社における不正会計

今年も早いもので、桜の便りが届きました。

東京では3月16日(土)に開花が発表されました。
平年より10日早く、統計開始してから過去タイのスピード記録になったようです。

話は変わりまして、今回は『不正ネタ』を扱いたいと思います。
(残念ながら、不正の便りも届いてしまいました)

明治機械という会社の連結子会社において、2012年11月に不適切な会計処理が発覚したようです。

また、通期業績予想の下方修正についてもリリースされています。

原因の1つとして、企業不祥事等における第三者委員会、社内調査委員会に係る費用が生じたことにより販管費増加を挙げているようです。

いったい、この連結子会社で何があったのでしょうか?

概要について

まず、今回登場する2社の関係を簡単にまとめます。

【親】明治機械(以下:親会社)
【子】ラップマスターエフエフティー(以下:ラップ社)

ラップ社ですが、どうやら子会社化した時点で『債務超過』に陥っていたそうです。(2004年3月期時点の純資産:▲1,045百万円)

「なぜ債務超過の会社を?」と思うかもしれないので、その理由を探ってみました。

親会社の臨時取締役会議事録によると、当時経営の多角化を積極的に図る中、当時脚光を浴びていた『半導体事業』に着目したという経緯があったようです。

人間である以上、「投じた資本を回収したい」という心理になるのは当然の流れです。ラップ社の財務状況は依然として厳しいものでしたので、業績向上により債務超過を回避するよう、親会社からの圧力があったそうです。

更に、ラップ社幹部のコンプライアンス意識の低さも相まって、不適切な会計処理を誘発させたとも報告されています。

過年度の決算修正における損益のインパクト(5期分)は、

●連結  ▲660百万円
●個別 ▲1,168百万円

となっています。

親会社が公表している連結貸借対照表(2012年12月31日時点)を見てみると、純資産の合計が3,543百万円になっています。
今回の過年度修正は、同社の財務状況に大きな影響を与えそうです。

不適切な会計処理とは?

ラップ社で行われた不適切な会計処理ですが、大きく2つに分類することができます。

【1】押込売上・架空売上の計上

●受注が無いにも関わらず、その代理店に注文書の発行を依頼し、装置機械を出荷させた(押込売上)

●発注見込みが全くないにも関わらず、架空の注文書を作成を依頼し、装置機械を出荷させた(架空売上)

こんなことをやっていたようです。
2008年~2009年度の2期において、42台売上計上しましたが、そのうち17台(約40%)は押込・架空売上だったそうです。

先ほど、「ラップ社幹部のコンプライアンス意識の低さも相まって」と書きましたが、その実情を申し上げると、幹部から多数の従業員に対して押込販売・架空販売の処理するメールが公然と送信されていたようです。
※もしこんなメールを受信したら、第三者に転送したくなりますね

【2】不適切な原価流用

装置機械を製造していると、部品が余ってしまうことがあります。

その部品が、他の仕掛中(製造途中)の装置機械の部品として転用できる場合、原価の一部を「完成品」⇒「仕掛品」に付け替えることができるルールを設けています。

この結果、
●完成品 … 売上原価(P/L)が減少 ※つまり利益が増える
●仕掛品 … 棚卸資産(B/S)が増加
となります。

原価流用自体は問題ないのですが、このルールを悪用し、不適切に利益を水増ししていたようです。

経営者絡みの不正を防ぐには?

今回の不正事例ですが、

●経営者が積極関与している
●社外含めて、「共謀」が見受けられる

ことから、『内部統制の限界』の際たる例でしょう。

本来、内部統制の整備・運用は、経営者がその責任を負っている訳ですが、今回の事例のように、ごく一部の企業ではそれを簡単に乗り越えてしまいます。

経営者の不正を防ぐには、残念ながら『厳罰化』しかないのでしょうか?
厳罰化の効果ですが、「飲酒運転」を例に挙げると明らかです。

【飲酒運転事故件数の推移】
http://www.sonpo.or.jp/protection/insyu/index.html

2002年の道路交通法改訂、そして2007年の改正道路交通法改訂により、飲酒運転による事故件数は、ご覧の通り減少傾向をたどっています。

後者(2007年)の法改正に至った経緯には、福岡市職員の飲酒運転により、小さな子どもが亡くなったという痛ましい事故がありました。

何か悪いことが起こると、法律が新たに制定されたり、厳罰化される印象があります。実際にそんなことが起こらないことを切に願うばかりです。

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