金融庁の「不正リスク対応基準」を読む

2011年秋に次々と明るみになった大手企業の不正会計事件。
その状況を看過できない金融庁が、一つの結論に至りました。

3月13日、金融庁の企業会計審議会監査部会にて、『監査における不正リスク対応基準』を取りまとめました。

これにより、財務諸表監査の実効性向上を図ろうとする狙いがあるようです。

今回の不正リスク対応基準ですが、

1、職業的懐疑心の強調
2、不正リスクに対応した監査の実施
3、不正リスクに対応した監査事務所の品質管理

の3本柱を掲げているようです。
以下、『不正リスク対応基準』について見ていきましょう。

◆1.職業的懐疑心の強調

まず、『職業的懐疑心』という用語ですが、簡単な表現を用いると、

『財務諸表に重要な虚偽表示があるかもしれないので、常に注意しましょう!』

ということです。
※これは内部監査でも同じことが言えますね

監査人は、不正リスクに対応するためには、誤謬(故意ではない)に比べて、より注意深く批判的な姿勢で臨むことが必要とされます。

そのため、監査人としての職業的懐疑心の保持及びその発揮が特に重要であると考えられ、冒頭に掲載することで強調しようという狙いがあるようです。

◆2.不正リスクに対応した監査の実施

今回の基準ですが、財務諸表に不正リスクがあるかどうかの確認を求めています。もし不正リスクの可能性があれば、監査計画の修正などを要求しています。

監査人が不正リスクの有無を判断するにあたり、以下のような例示が付録として加えられています。

●不正リスク要因の例示(P18~19)
●不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況の例示(P20~21)

また、財務諸表全体に関連する不正リスクが識別された場合には、「企業が想定しない要素を組み込むこと」が必要とあります。

つまり、「抜き打ち」ということになるのでしょうか?

◆3.不正リスクに対応した監査事務所の品質管理

何か新しい品質管理システムを導入しなくてはならないように映りますが、そうではないようです。

既存のシステムにおいて、不正リスクの観点から特に留意すべき点を明記したものがいくつかまとめられています。

その中でも特に強調されているのが『監査事務所間の引き継ぎ』でしょうか。
(オリンパス事件のときに、度々この話が出ていましたね)

前任・後任の各監査事務所において、やるべきことを以下まとめてみました。

【前任⇒後任】
 ●不正リスクへの対応状況を含め、監査上の重要な事項を伝達する
  例)企業との間の重要な意見の相違など

 ●引継に関する方針と手続に定めなければならない
  例)後任から要請があれば、「監査調書」の閲覧に応じる

【後任⇒前任】
 ●監査上の重要な事項について質問するように、引継に関する方針および手続に定めなければならない
 例)監査事務所の交代理由、不正リスクへの対応状況、重要な意見の相違など

────────────────────────────────

改めて上記URLの内容を眺めてみたところ、P22に『監査基準』が掲載されています。

そしてP25の最下部には、『内部監査』に関する内容について触れられています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
監査人は、企業の内部監査の目的及び手続が監査人の監査の目的に適合するかどうか、内部監査の方法及び結果が信頼できるかどうかを評価した上で、内部監査の結果を利用できると判断した場合には、財務諸表の項目に与える影響等を勘案して、その利用の程度を決定しなければならない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2行目に「内部監査の方法及び結果が信頼できるかどうかを評価」とありますが、何をもって評価するのかというと、

1.教育水準
2.経験
3.資格
4.監査調書などの品質

などが考えられます。
そして、『3、資格』の筆頭はCIA/公認内部監査人と言っても間違いではないでしょう。

2011年秋の事件以降、不正の防止やERM(全社的リスクマネジメント)など、経営者の内部監査に対する期待が高まっていると言われています。

その期待に応えるためには、監査品質の「高度化」と「均質化」が必要でしょう。

「高度化」と「均質化」、これら2つを実現できるのがCIA/公認内部監査人です。
新年度に向けて、ぜひCIA/公認内部監査人にチャレンジしてみませんか?

バックナンバー

Vol.55
試験制度改定前のラストチャンス!
Vol.54
常態化した不適切な会計処理
Vol.53
粉飾すれば、給料・賞与が増える?
Vol.52
絶対的権力者の暴走から「内部統制の限界」を考える
Vol.42
金融庁の「不正リスク対応基準」を読む
Vol.41
桜の便り&連結子会社における不正会計
Vol.40
数値目標のため。食品スーパーの不正会計
Vol.39
CIAで学ぶ「リースバック」とは
Vol.38
宮城県 山元町社協で起きた着服
Vol.37
2013年、MBOの実施動向は?
Vol.36
北海道シリーズ『着服事件』
Vol.35
北海道内の大学で発生した『不適切な経理処理』
Vol.34
『虚栄心』が招いた不正会計
Vol.33
レンタル企業ならぬ「CCC」とは?
Vol.32
ギャンブル流用も?!子会社トップによる不正会計
Vol.31
今年は多い?!海外子会社での不正会計
Vol.30
「定率法」→「定額法」への変更の背景とは?
Vol.29
目立つ企業の横領と“4.5億円”
Vol.28
退職金・企業年金の会計ルール
Vol.27
海外子会社で発覚した不正会計
Vol.26
執行役員が不正行為~1億7,000万円の着服
Vol.25
もしも大切なデータが消えてしまったら?
Vol.24
内部監査人は増えているのか?減っているのか?
Vol.23
危険な会社は41社!ゴーイングコンサーンについて
Vol.22
内部監査研修の充実化に向けて
Vol.21
監査基準が変わる!~不正会計防止に向けて~
Vol.20
キャッシュフロー計算書から、企業の栄枯盛衰を辿る
Vol.19
2011年度に不正会計を開示した上場企業数は?
Vol.18
コンプライアンス違反で倒産!?
Vol.17
『続』ここ最近の「横領事件」を探る
Vol.16
意外にも多い!? ここ最近の「横領事件」を探る
Vol.15
「定率法」から「定額法」へ、帝人の例
Vol.14
不正が発覚した企業のその後を追う
Vol.13
内部監査を通じて「棚卸資産を過大計上」を発見
Vol.12
2012年、内部統制の枠組みが変わる!?
Vol.11
2011年のMBO実施企業数、ついに20社の大台に!
Vol.10
杜の都で、常勤監査役が大暴走!?
Vol.09
内部監査が企業ブランドの向上につながる!?
Vol.08
「継続企業の前提」について
Vol.07
止まらぬJA香川県の現金着服
Vol.06
社債発行による資金調達
Vol.05
コーポレートガバナンスが問題なのか?
Vol.04
「元役員による会社資金の横領」から内部監査を考える
Vol.03
会計の概念で見る「すき家」の事例
Vol.02
2011年、MBO活況の裏側で「上場廃止」について
Vol.01
「社長の独断専行」から内部監査を考える
CIA無料説明会を予約する  CIA資料を取寄せる(無料)